旅情感あふれるフェリーで行く晩秋の房総半島

特集

狭い範囲でバリエーション豊富な旅が楽しめる千葉県の房総エリア。船旅をプラスして魅力のある旅へ。

SPECIAL THANKS
江見吉浦 海辺のキャンプ
https://umibenocamp.rsvsys.jp/

PHOTO&TEXT / 山岡和正

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

 先月のことだ。バイクで長距離のツーリングに行こうと予定を組んだのだが、出発前になってどうやら天候が怪しくなってきた。
現地で雨に降られるのは仕方がないとしても、初日から雨ではテンションが下がる。日程変更もできなかったので、行きは走るのを諦めてフェリーを使うことにした。
 分かってはいたものの、やはり行程の中に船での移動があるのは楽しく、それを追加することで旅をしているという感覚がさらに広がりを持つのだということを改めて感じたのだ。
 今回、房総へ行こうと決めたのは、三浦半島から東京湾を横切り房総半島へと渡るフェリーに乗りたかったからだ。
 北海道や九州行の船旅に比べればミニマムではあるが、十分に船旅気分を味わえるショートトリップである。

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

早朝の久里浜港。房総半島の金谷港まで、片道40分の船旅である。翌日の復路では夕景も楽しめた。

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)
男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

海辺で“地のもの”といえば海鮮だ。刺身の他にもアジのフライや『なめろう』も食べておきたい。

海と山と船旅と次々に移り変わる情景

 横須賀市にある久里浜港のフェリー乗り場に到着すると、先客が5台一列に並んでいた。チケットを買ってしばらくすると乗船が始まり、前方の車の後を追うようにシルバーのJB74もゆっくりと白い巨体に飲み込まれていく。この乗船と下船のタイミングがフェリーの醍醐味だといっても良いだろう。
ほどなく出港して、数分後には東京湾の海上を航行していた。泡立つ白いラインを引きずりながら、左右を横切る貨物船の隙間を縫うように進み、遠くには富士山や大島が霞んで見えていた。
もう少し船旅を満喫したかったのだが、金谷港に着岸するとのアナウンスが聞こえてきたので車両甲板へと急いだ。
 上陸した金谷港はまだ時間が早いのか閑散としている。近くにある、よく行く林道を少し走って珈琲タイムをとることにした。以前はこの林道も2方向に抜けられたのだが、水害により道が荒れて通行止めとなってしまったようだ。前回来た時には無かった崖崩れもあり、少しずつアグレッシブな林道に変貌しつつある。そのうち、この林道全体も通行止めになるのかもしれない。
 それでも、小休止した林道脇の広場には秋とは思えないほどの暖かな日差しが注ぎ、柔らかな風が吹いている。あまりの心地良さにうとうとしてしまうほどだった。
 山間部を抜けて海沿いの国道へ出ると、辺りは急に山から海へと変わり、全く別の世界の風景へと変貌した。

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)
男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

林道を進むと徐々に路面が荒れてきて、そのうち雨に削られたような深いⅤ字溝も姿を現した。慎重にライン取りしながら進んでいると、今度はがけ崩れである。ひやひやしながら抜けた危険ルートの先には、通行止めの標識が鎮座していた。

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

小春日和の林道わき
珈琲と静かな時間

林道走行中に気持ちの良い休憩スポットを発見したので、急停止してバックで路肩に駐車した。優しい光と風につつまれての珈琲ブレイクは時間を忘れてしまうほどだった。

 少し先にある海辺のキャンプ場は静かで、波の音だけが聞こえていた。どうやら今夜は一人きりのようだ。風もなく焚火の炎も美しい形を保っている。簡単な夕食を済ませて、夕陽が沈むのを待った。波寄る岩場も光を失っていく。上空は雲が多く霞んでいて、期待していた星空は見えない。それでもコンディションの良いキャンプ場と天気のおかげで、ゆっくりと過ごすことができた。

男の車中泊一人旅(Vol.35 南房総編)

遠く水平線を望み
さざなみの傍で眠る

海の近くでキャンプすると、強風や潮、湿度などに悩まされることが多いのだが、この日の海は凪いでいて最適の海キャンプになった。陽が沈んだ後、車内で背面ドアにもたれながら空と海の境界線が無くなっていくのを眺めていた。


 翌朝は波の音で目が覚めた。
 早々に撤収して南下し、海沿いのバイパス脇から延びる林道へと入る。走り始めるとすぐに道は酷い泥濘地へ変わって四駆にしなければ進めなくなった。この先はほぼ廃道状態で、辺りは暗くジャングルの様相である。スタックするほどではないので、ジャングルクルーズを楽しみながらゆっくりと進むしかないが、房総の林道は亜熱帯の森を連想させる場所が多く、それが魅力の一つでもある。
 そのうちに道は泥から土へ、そしてアスファルトに変わる頃、前方に出口ともいえる光が見えてきた。光の向こうには水平線が浮かび上がり、少しだけ潮の香りがした。


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